コピー機の謎解明!静電気が描く「見えない文字」を可視化する実験

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

コピー機の仕組みがわかる!?静電気を使った不思議な実験

ボタンひとつで、魔法のように紙が複製されるコピー機。学校やコンビニ、オフィスで当たり前に使っていますが、あの「速さ」と「正確さ」の秘密、知りたくありませんか? 実は、冬場にセーターを脱ぐとパチッとくる、あの「静電気」がカギを握っているんです! 普段はちょっと厄介(やっかい)に感じる静電気が、コピー機の中では「見えない手」のように大活躍。インクの粉(トナー)を紙にピタッとくっつける、重要な役割を果たしています。

今回は、そんな静電気の不思議な力を借りて、何もないところから文字を浮かび上がらせる、まるで魔法のような実験をご紹介します。これがわかれば、あなたも「コピー機はかせ」になれるかも? 身近な材料で簡単にできるので、ぜひ挑戦してみてください!

用意するもの

プラスチックボード(お肉等の入っていたプラスチックトレーなどでも可)、タオル、スチールウール、やすり

※ カラーボードという発泡スチロールでできたボードがダイソー等で売られています。100円ショップで手軽に揃(そろ)うものばかりですね!

方法

1 プラスチックボードを机の上において、タオルを指にまきつけて文字かきます。もちろんインクが出るわけではありません。でも、この「こする」という作業こそが、目に見えない魔法の「下書き」になるんです。今回は「かがく」と書きました。

2 スチールウールをこの上に巻きます(まきちらします)。スチールウールをもって、やすりでゴシゴシこすりましょう。スチールウールを細かい粉にするのがポイントです。なぜなら、細かい粉の方が、あとで静電気の力にくっつきやすくなるからです。

怪我をしないように保護者の方といっしょにやりましょうね。

3 ある程度まいたら、軽くボードを叩(たた)いて余分な粉を落とします。あら不思議!タオルでこすった通りの文字が現れます!面白いですね。

「かがく」の文字現る!

仕組み

なぜ、こんな不思議なことが起こるのでしょうか?

発泡スチロール(プラスチックボード)をタオル(布)などでこすると、「摩擦帯電(まさつたいでん)」という現象が起こります。これは、異なる物質同士がこすれ合うことで、電気が移動して静電気が発生する現象。セーターを脱ぐときにパチパチするのもこれですね。この実験では、ボードの表面がマイナスの電気を帯びます。

目にはこの段階では見えませんが、摩擦で描いた部分は(特に強く)帯電しています。これがポイントです。ボードの上には、静電気でできた「見えない文字」が描かれている状態なのです。

そこへ、細かくしたスチールウール(金属)の粉をまくと、スチールウールの粉が「静電誘導(せいでんゆうどう)」という現象を起こします。ボードのマイナスの電気が、金属であるスチールウールの粉の中にあるプラスの電気を引き寄せるのです。電気にはプラスとマイナスが引き合う力(クーロン力といいます)がありますからね。

その結果、静電気がたまっている部分、つまり「見えない文字」が描かれた部分にだけ、スチールウールの粉がピタッ!とはりつきます。最後に余分な粉を落とすと、文字が浮かび上がる、というわけです。

静電誘導について、詳しくはこちらの記事もご覧ください「風船をアルミ缶に近づけてみる」。

これはコピー機の仕組みと基本的な原理は同じです。

実際のコピー機では、まず「感光ドラム」という筒(つつ)全体を静電気で帯電させます。次に、コピーしたい原稿に強い光を当て、その反射した光をドラムに当てます。

すると、原稿の「白い紙」の部分から反射した光が、ドラムの静電気を消してしまいます(光が当たると電気が逃げる特殊な性質を使っています)。

結果、原稿の「黒い文字や絵」の部分(そこからは光が反射しないため)だけが、ドラムの上で帯電したまま残ります。これが、実験で作った「見えない文字」と同じ状態です。

そこへ、トナーというインクの細かい粉(実験で使ったスチールウールの粉と同じ役目ですね!)を近づけると、静電気が残っている部分(=黒い文字の部分)にだけトナーが引き寄せられてくっつきます。

最後に、そのトナーを紙に写し取り、熱でギュッと押し付けて固定(定着)すれば、コピー完了!というわけです。身近なコピー機に、こんなスゴい科学が隠されていたなんて、面白いですよね! 家庭でも簡単にできて、暗号のようで面白いこの実験。お試しあれ!

静電気発生マシーン(バンデグラフ)を使うと、こんな面白い実験が!!

大規模な静電気実験には、バンデグラフがおすすめ!そんなバンデグラフを使った面白実験も公開しています。この実験は、広瀬すずさん・鈴木亮平さん・やす子さん・チョコレートプラネッツの長田さん・松尾さん等とテレビ番組にて行った実験も含まれます。詳しくはこちらをどうぞ

※ なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします

【特集】やめられなくなる!静電気実験

お問い合わせ・ご依頼について

科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中

科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!